毎日新聞の校閲ブログ「毎日ことば」で、人名の入力間違いに関する記事が更新されていました。
私は翻訳以外に、趣味も兼ねてデータ入力の仕事もしているのですが、ここでも人名の漢字はかなり難所です。
また、そもそも人のお名前の入力/書き間違いは非常に失礼なことであり、絶対にあってはいけません。
それにもかかわらず、落とし穴が本当に多いのが人名ですよね。私も何度も痛い(そして申し訳ない)思いをしています。
今回は、この記事の内容を少し紹介するとともに、私自身が気を付けていることも付け加えたいと思います。
人名のミスの原因
記事によると、過去に「おわび記事」を掲載したことのある漢字間違いには次のものがあるそうです。
(○が正しいが→×に間違えた)
〈姓〉
○松浦→×杉浦 ○湯原→×湯浅 ○冨長→×冨永 ○河東→×川東 ○真狩→×真刈 ○丸畑→×九畑 ○平郡→×平群 ○島澤→×島津
〈名〉
○彩香→×彩夏 ○穂貴→×穂高 ○裕昭→×祐昭 ○将太→×翔太 ○留依→×留衣 ○庄市→×庄一 ○哲郎→×鉄郎 ○直仁→×直人 ○武雅→×武雄 ○俊広→×俊弘 ○三恵子→×美恵子 ○恵都子→×恵津子
また、間違いの理由として、
- 取り違えやすい漢字を間違える
例:「長⇔永」「河⇔川」「裕⇔祐」「依⇔衣」「市⇔一」 - “多数派”に流されやすい
例:「湯原⇔湯浅」「島澤⇔島津」「武雅⇔武雄」「恵都子⇔恵津子」(後者がポピュラー)
が挙げられていました。
私のデータ入力の仕事の場合、同じ漢字であっても別字や旧字体を取り違えてしまう、というパターンもあります。
例:「浜、濱、濵」「斎藤、齋藤、齊藤」「恵、惠」「高、髙」「崎、埼、﨑」「磯、礒」
※環境依存文字は正しく表示されていないかもしれません。
記事の例では、他にも
- 「太⇔大」「菊池⇔菊地」
- 「渡部⇔渡辺(渡邉、渡邊など)」「掘口⇔堀口」「明宜⇔明宣」「一朗⇔一郎」「通雄⇔道雄」「西林⇔西村」
などもありそうですね。
とにかく原因はほぼ間違いなく「思い込み」です。
「こういう字に違いない」と疑いを持たなければ、どれだけ離れた文字でもスルーしてしまいます。
したがって、「いかに思い込みというフィルターを剥がすか」が対策になります。
誤記しないための対策
1. 間違いのパターンを知る
例えば、私はデータ入力の仕事で見つけるまで、「惠」という形を知りませんでした。
知らないと、「これは一般的な『恵』とは違う字かもしれない」と疑うことすらできません。
ありがちな間違いをネットなどで探したり、間違えたことのある言葉をデータベースに入れておくのもいいでしょう(私はそこまではやっていませんが…)。
2. 見た目に違和感を持ったらすぐ辞書などで確認する
最も違和感に気づけるのは、意外とパッと見た瞬間だったりします。
「あれ……?」と思ったら、私はその瞬間に辞書を引くか、変換キーを何度か押して他の候補がないか探しています。ほとんどの場合、違和感が正しいことがわかります(恐ろしい…)。
3. 入力の際と別の方法で再チェックする
これは記事にも載っていた方法です。
目視による入力・点検では、特に似た字体の漢字が紛れ込んでいても錯覚する危険性が高くなる。取材メモや資料などからの入力時・点検時には、一字一字漢字の説明を他人にする気持ちで、周囲の迷惑にならない程度に声に出しながら作業を行う習慣を付けたい。
例えば、上記の「松浦」が正しいのに「杉浦」と誤入力したケースでは、「木偏におおやけの松、松竹梅の松、松山市の松……に浦島太郎の浦」のように、「字体を分解してみる」「音読みに直してみる」「有名な固有名詞に当てはめてみる」……など自分なりに漢字の説明を複数パターン工夫すれば、かなりのミスは防げる。併せてペンで一字一字、傍点を打つ作業も欠かせない。
たとえば「訓読みに直して読み下す」「有名な固有名詞に当てはめる」は私もいつもやっています。かなり有効です。
あと、入力がキーボードだった場合は、見直すときは指で手書きしてみるとか。
最後の文字から逆方向に読むのもいいですね。
入力の時点では疑問を持っていなかった箇所を別の角度から見ることで、思い込みのフィルターをはがすわけです。
しかし、はがしてもはがしてもくっつき続ける思い込みフィルター…。
「絶対何か間違えている!」という気持ちをいかに切らさずに持ち続けられるかが、結局は一番の対策なのかもしれません。
書いているうちに、この誤記対策は人名に限らず書き物すべてに共通だと気づきました。
書き間違いは絶対にあるので、見直しをもっとがんばらなくては。
明日も幸せである様に♪